幕末から明治にかけて、街道一の親分と言われた侠客に清水次郎長がいます。
この次郎長さんのしかり方でこんなエピソードがあります。
榎本武揚が海軍大臣の在職中、ある日次郎長を訪ねて、「お宅の何百人という
子分たちを見ていると、誰もが実に、すなおに動いているが、その統率のコツを
おしえてもらえないか」との問いに、次郎長さんは「無学の私に、別にコツなどご
ざいません。子分たちのほとんどは、ぐれて博徒になったような奴ばかりでろくな
者はいませんが、私の命令には、皆気持ちよく従ってくれます。コツといえるかど
うか、強いていえば、どんなにできの悪い三下奴でも、私はしかるときには、人の
面前では(見せしめのために)叱るようなことは、決していたしません。誰もみてい
ないところでなら、なぐることもいたしますが」と答えたそうです。
「なるほど、それだ。子分に恥をかかせまいとする、実に見上げた指導法だ。私も
必ずそのまねをさせてもらおう」と、さすがの榎本武揚も、痛く感服讃歎したといいます。
人心掌握術、私たちも見習おうではありませんか。