天台宗といえば比叡山、その天台座主の山田恵諦さんの著書を読んでいます。
その本の中の一節に、
「日本人は宗教心に乏しいのかとなると、そうではないのです。日本人は、本当は
信仰心、宗教心が篤いのです。また、日本という国は、宗教の門戸が非常に寛大
に、大きく開かれています。
浄土宗の総本山の知恩院にしたところで、別に名刺をもっていかんでも、信徒で
なかろうと、誰でも参れる。
明治神宮にしても同じことで、仏教徒であろうと、キリスト教徒であろうと、誰が
参るのも拒みはしない。
5年ほど前、私も明治神宮にお参りしたことがありまして、宮司さんからお話を
伺ったことがある。その時におもしろいことを話してくださった。
明治神宮のあの大きな賽銭箱を大掃除しようということになって、中のものを全部
出して調べてみた。すると、外国の紙幣、貨幣がたくさん混じっている。詳しく分類
してみると、それが百三十ヶ国に及んだ。現在国連に加盟している世界の国が百七十
くらいですから、いかに世界中に及んでいるかがわかります。
明治神宮と外国の人たちと、どんな関係があるのか。何にも関係がないわけです。
ところが、多くの人たちがここに参って、しかもお賽銭をあげている。明治天皇がどんな
人であるとか、何の神さんであるとか知らんでも、人間そのものの宗教心というものが
それをさせる。その現れであろうと思います」
人間の心の安定と現実の幸せを求める、というところに宗教の本源があります。宗教心
によってこそ、優しさや思いやり、感謝、礼節、善悪というような、人間の生き方として大切
なもののすべてが生まれてくるのです。