バカッお前さんの身体の方が、わしには大切だぞ。玄峰老師の逸話より

zento

2023年04月20日 20:56




近代の禅僧と謳われた山本玄峰老師は酒を


好まれた。しかし、常に「酒は、キュッと飲んで


キュッとやめようぜ」と、長酒の客を叱った。


主客がいつまでも酒を飲んでいると、給仕をする


雲水の修行の時間が少なくなるとの思いやり


である。


戦後の物資の不自由な頃、玄峰老師は東京


から帰寺のおり、一升瓶を信者からいただいた。


侍者の雲水が、後生大事に混雑の車中を大切に


かかえたその酒ビンを、下車した三島駅の階段


で足を滑らせて落として割ってしまった。


「バカ、わしの好物をみんなこぼしてしまって」と


怒られるに違いないと、雲水は生きた心地が


しない。ところが、玄峰老師は、侍者のそばへ


よってきて、やさしく「けがをしなかったか。」と


侍者をいたわる。「酒は金で買える。心配せん


でもよい」


侍者は、いよいよ恐縮して「お金を出しても


お酒は容易に買えないのです。」と重ねて


わびる。当時はそういう時代で、一升びんの


お酒は貴重品だった。


「バカッ」と老師ははじめて口にする。「お前さん


の身体の方が、わしには大切だぞ。けがをさせ


たら親御さんに申し訳がないからなあ。」


侍者は、玄峰老師の温情に感泣する。このとき


以来、彼の心中に深く期するものがあり、一層


修行に励む。老師が病むときには、彼は自分を


省みず老師の看護につとめた。


玄峰老師のお酒の逸話ですが、グッときますね。

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