愛語よく回天のちからありと仏教ではいいます。愛語とはどんな言葉かけでしょう。
2023年04月21日

円覚寺派の元管長様、釈宗演老師の逸話です。
ある夏の暑い日、師匠の老師が外出した。めったに
外出しない老師が、長時間外出されたので小僧達
は大喜びだ。それぞれ涼しい場所を探して昼寝を
始めた。宗演小僧も老師の居間から本堂につな
がる渡り廊下で昼寝を始めた。
外出された老師が、忘れ物でも思い出したのか、
ひょっこり部屋にもどってこられた。宗演小僧は
とっさのことで起き上がれず、やむなく狸寝入り
を決め込んだ。しばらくその寝姿を見ていた老師
は、大声で叱りはしなかった。
「ごめんなされや」と老師は、一声低い声で言うと
合掌して、宗演小僧の足のあたりをそっと、また
いで部屋に入っていかれた。
うす目をあけて狸寝入りをしていた宗演小僧は
息の根が止まるほど身にこたえた。
後年、円覚寺の管長になられてから、当時を
追想して「恥ずかしさと申し訳なさとで、心の
底まで真っ赤になった。人の師たるべき者は
どうあるべきかを教えられた」と。
相手の心にしみ通る言葉を「愛語」と申します。