バカッお前さんの身体の方が、わしには大切だぞ。玄峰老師の逸話より

2023年04月20日




近代の禅僧と謳われた山本玄峰老師は酒を


好まれた。しかし、常に「酒は、キュッと飲んで


キュッとやめようぜ」と、長酒の客を叱った。


主客がいつまでも酒を飲んでいると、給仕をする


雲水の修行の時間が少なくなるとの思いやり


である。


戦後の物資の不自由な頃、玄峰老師は東京


から帰寺のおり、一升瓶を信者からいただいた。


侍者の雲水が、後生大事に混雑の車中を大切に


かかえたその酒ビンを、下車した三島駅の階段


で足を滑らせて落として割ってしまった。


「バカ、わしの好物をみんなこぼしてしまって」と


怒られるに違いないと、雲水は生きた心地が


しない。ところが、玄峰老師は、侍者のそばへ


よってきて、やさしく「けがをしなかったか。」と


侍者をいたわる。「酒は金で買える。心配せん


でもよい」


侍者は、いよいよ恐縮して「お金を出しても


お酒は容易に買えないのです。」と重ねて


わびる。当時はそういう時代で、一升びんの


お酒は貴重品だった。


「バカッ」と老師ははじめて口にする。「お前さん


の身体の方が、わしには大切だぞ。けがをさせ


たら親御さんに申し訳がないからなあ。」


侍者は、玄峰老師の温情に感泣する。このとき


以来、彼の心中に深く期するものがあり、一層


修行に励む。老師が病むときには、彼は自分を


省みず老師の看護につとめた。


玄峰老師のお酒の逸話ですが、グッときますね。



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